IR漫画とは?発注タイミングと費用相場を年次サイクルで解説


先月実施した個人株主向けアンケートで、「文字と数字ばかりで読めなかった」という声が例年より増えていました。経営企画・IR担当者にとって、他人事ではないはずです。担当役員から「他社は漫画や図解を使っているらしい」と、名指しで検討を求められることも珍しくありません。本記事では、統合報告書や決算資料の「読まれなさ」を解決する手法として注目されているIR漫画を解説します。どの部分を漫画化すべきか、いつ発注すべきか、正確性をどう担保すべきかを扱います。
この記事の要点
- IR漫画は、数値中心のIR資料を経営理念やストーリーで補い、投資家の理解を助ける手法です。
- 漫画化に向くのは、財務数値ではなく、改訂頻度が低い経営理念やストーリー部分です。
- 発注のタイミングは、決算発表期か統合報告書制作期かによって適した範囲が変わります。
IR漫画とは?投資家に「伝わらない」を解決する情報開示の新しい手法

IR漫画とは、統合報告書や決算資料など数値中心の開示情報を、漫画という表現形式で補う手法のことです。投資家や株主に、企業の歩みや戦略を分かりやすく伝えます。
「IR漫画」には、IRの基礎知識を学ぶための漫画作品も含まれます。本記事で扱うのは、開示情報を漫画化して発信する手法としてのIR漫画です。統合報告書、決算説明資料、株主総会招集通知などが対象になります。
具体的な事例やサービス内容は、本文の最後でご案内します。IR漫画の位置づけは、マンガマーケティングとは?6施策別の効果・費用・使い分けを解説でも整理しています。
なぜ今、統合報告書や決算資料が「読まれない」のか
非財務情報の開示項目は年々増えています。統合報告書が数十ページから百ページを超える企業も珍しくありません。この分量の多さが、最後まで読まれない一因になっています。
機関投資家は多数の資料を短時間で精査しなければなりません。個人投資家は、専門用語の多さに心理的なハードルを感じやすいという課題もあります。社内向けに配布した場合も、資料を隅々まで読み込む従業員は多くありません。
非財務情報を漫画で補う取り組みは、企業側でも始まっています。ある製造業の企業は、2026年3月に公表したIRセミナー資料で漫画表現を取り入れました。業績に加え、現場の考え方や企業文化を視覚的に伝える試みです(出典:平山ホールディングス プレスリリース)。数字だけでは伝わりにくい部分を補う発想は、業種を問わず広がりつつあります。
情報量の多さ、専門性の高さ、抽象度の高さ。こうした課題に漫画がどう機能するのかを、次の項で見ていきます。
IR資料のどこを漫画化すべきか──数値情報と経営理念で分かれる向き不向き

IR資料には、改訂頻度が高い部分と低い部分があります。財務数値や法定文言は前者、経営理念や中期経営計画の背景にあるストーリーは後者にあたり、漫画化には後者が向いています。
制作実務の観点で見ると、決算数値のように毎期更新される情報を漫画に描き込むと、開示のたびに描き直しが発生します。実物の数字と食い違うリスクも生まれます。当社の制作実績でも、改訂頻度の高い内容は漫画化に不向きだと判断してきました。マニュアル系コンテンツの制作で重ねてきた知見です。
一方、経営理念やパーパス、中期経営計画の策定に至った背景は、年単位で大きく変わることが少ない領域です。現場の取り組みも同様です。漫画として描いても、実物との食い違いが生じにくくなります。統合報告書のうち、こうしたストーリー部分から漫画化を検討すると、更新の手間を抑えながら着手できます。
具体的には、統合報告書の巻頭にある「トップメッセージ」が候補になります。「価値創造ストーリー」や、決算説明資料の「中期経営計画の背景」も候補です。財務諸表やリスク情報などの定量パートは、従来どおりテキストと図表で正確に記載します。漫画は理解を補う位置づけにとどめるのが、実務的な判断です。
IR年次サイクルに沿った漫画活用のタイミング

IR漫画は、着手する時期によって表現の幅が変わります。決算発表期、統合報告書制作期、中期経営計画策定期という年次サイクルのどこにいるかで、社内調整のしやすさも変わります。
統合報告書や決算資料の制作は、年間のスケジュールに沿って進みます。漫画制作を検討するタイミングで、着手できる範囲は変わります。まず自社がどの時期にいるかを整理することが、実務上の出発点になります。
| 時期 | 主な資料 | 漫画活用の向き不向き・留意点 |
|---|---|---|
| 決算発表期(四半期・本決算前後) | 決算説明資料、適時開示資料 | 数値の確定・開示が優先されます。漫画は補助資料やSNS発信など、開示本体と切り離した活用が現実的です |
| 統合報告書制作期(決算後〜発行まで) | 統合報告書、サステナビリティレポート | 制作スケジュールに比較的余裕があります。トップメッセージや価値創造ストーリーの章に組み込みやすい時期です |
| 中期経営計画策定期 | 中期経営計画説明資料、株主総会招集通知 | 経営陣の議論を経て内容が固まります。シナリオ確定後に着手すれば計画発表に合わせやすくなります |
当社の場合、IR漫画は標準10ページで5〜6週間が目安です。統合報告書全体に組み込む規模なら、3〜4ヶ月かかります(2026年時点・当社実績)。株主総会からの逆算スケジュールにも目安があります。
3月総会なら12月着手、6月総会なら3月着手が標準的です。決算発表期のように開示そのものが最優先される時期は、この期間を確保しにくいため、開示資料への組み込みは避けます。発表後のフォローアップ資料として位置づけるほうが現実的です。
機関投資家・個人投資家・社内向けで変わる伝え方
IR漫画を届ける相手によって、盛り込むべき情報の粒度は変わります。機関投資家か、個人投資家か、社内の従業員かで、漫画に期待する役割も変わります。
機関投資家は、財務データや事業モデルを高い解像度で読み込む専門家です。漫画は数値情報の置き換えではなく、経営方針の背景を補足する位置づけにとどめるのが適切です。個人投資家には、専門用語の少ないストーリー形式が向いています。事業に取り組む理由を伝えると、興味を持ってもらいやすくなります。
社内向けに展開する場合は、目的が一つ加わります。統合報告書の内容を、従業員が自分ごととして理解できるようにする目的です。同じ漫画をそのまま転用するのではなく、配布先ごとに使う章やページを選ぶ運用が現実的です。
ホワイトペーパーも、読了率やダウンロード数を指標にするコンテンツです。IR漫画も同様に、「誰に、何を持ち帰ってもらうか」を先に決めます。制作範囲をそこから絞り込むと、限られた予算でも効果を出しやすくなります。詳しくはホワイトペーパー漫画|DL・読了・商談化を増やす3つの使い分けでも解説しています。
IR漫画制作で失敗しないためのチェックポイント
IR資料を漫画化する際は、数値の正確性を損なわない表現が欠かせません。監査法人や社内の開示スケジュールとの整合も、企画段階から確認しておく必要があります。
社内でIR漫画の導入を検討する際は、次の3点を企画の初期段階で確認しておくと、後工程での差し戻しを避けやすくなります。
- 財務数値やリスク情報を漫画内でデフォルメして表現していないか
- 開示予定の情報と齟齬が生じないよう、シナリオ段階で法務・IR部門が確認する体制になっているか
- 監査法人や弁護士によるレビューのタイミングを、通常の開示資料の確認フローに組み込めているか
これらは、漫画制作会社側の技術だけでは担保できない項目です。発注企業側の法務・IR部門との連携体制をどう作るかが、実務上の成否を分けます。
当社の制作実績には、増資という経営判断を伝えるIR漫画の事例があります(クライアント:Birdman社)。株主総会資料として制作しました。決算資料の数字を、経営者と社員の物語に変換する構成に仕上げています。数値の正確性と、物語としての伝わりやすさは両立できる目標です。事例の見せ方そのものについては、導入事例漫画はなぜ商談で刺さるのか|検討フェーズ別の見せ方と費用でも扱っています。
窓口の設計も重要です。当社の場合、監査法人や法務との連絡窓口はクライアント側のIR担当が担います。当社の編集担当が、修正対応を一元化する体制です。重要事実の取り扱いや将来予測の表現など、レビューが必要な論点は企画の初期段階で洗い出しておくと安心です。開示スケジュールとの整合に不安がある場合は、無料相談で制作可否とスケジュール感を確認できます。
IR漫画の制作費用と進め方
IR漫画の制作費用は、当社の場合1ページあたり25,740円からです(原稿料込み・2026年時点)。統合報告書冒頭5〜10ページの導入用なら、約15.4万円〜28.3万円が目安です。
統合報告書のうち、何ページを漫画化するかによって、総額と制作期間は変わります。財務数値のように改訂頻度の高い部分は対象から外します。経営理念やストーリー部分に絞ることで、必要なページ数を抑えながら着手できます。周年史と統合して制作する場合は、30〜50ページで40万円〜80万円規模になります。
使用権は発注企業に帰属し、統合報告書・株主総会招集通知・IRサイトなど複数媒体で展開できます。年次更新のたびに内容をアップデートする運用にも対応しています。具体的な制作事例やサービスの詳細は、IR漫画・IRマンガ制作|投資家・株主・社員に届ける物語で紹介しています。まずは無料相談で、自社のIR年次サイクルに合わせた見積りを確認してみてください。
まとめ:IR漫画は「いつ」始めるかで成果が変わる
IR漫画は、数値中心の開示情報を経営理念やストーリーで補う手法です。決算発表期、統合報告書制作期、中期経営計画策定期のどの時期に着手するかで、実現できる範囲が変わります。
「文字と数字ばかりで読まれない」という個人株主の声や、経営陣からの検討指示は、多くの企業に共通する課題です。資料のどこを、いつ、どこまで漫画化するか。この判断を積み重ねることが、着実な対応につながります。
執筆・監修:ビズマンガ編集部
BtoB企業向け漫画制作の企画・SEOコンテンツ制作を担当。現場で蓄積した一次情報をもとに構成・執筆しています。記載内容に誤りを見つけた場合は、お問い合わせよりご指摘ください。確認のうえ速やかに訂正します。
